大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所 昭和24年(控)897号 判決 1949年11月25日

被告人

高三用

崔鳳相

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋地方裁判所岡崎支部に差し戻す。

理由

前略

依て先づ職権を以て、原裁判所が爲した訴訟手続の当否に付調査すると、原判決は被告人両名に対する原判示事実を認定するに際つて之が証拠として檢証調書を挙示して居り、該檢証調書が原裁判所に於て昭和二十四年六月二十七日の公判準備期日に爲された檢証の結果を記載したものを指称するものであることは、本件訴訟記録に徴し明白である。然らば斯の如き公判準備期日に於て爲された檢証の結果を記載した檢証調書に付いては須らく其の後の公判期日に於て之が証拠調手続を履践しなければならぬことは、刑事訴訟法第三百三條の明記するところであるに拘らず、本件訴訟記録中に添綴されて居る右檢証が爲された公判準備期日以後の原審公判調書に依るも、前記檢証調書に付いて、原審公判期日に於て証拠調手続が履践された事跡は毫も之を認め得ない。果して然らば右檢証調書を被告人両名に対する原判示事実認定の証拠として挙示した原判決には、其の公判期日に於て適式な証拠調手続が履践されなかつた前記檢証調書を援用して、原判示のような有罪事実を認定したものと謂うの外なく、從て此の点に於て、原判決には其の訴訟手続に法令の違反が存することに帰着し、然かも其の違反は原判決に影響を及ぼすことが明らかなものと謂わなければならぬ。

更に進んで職権を以て原判決の法令適用の当否を調査すれば原判決は其の理由中の事実摘示の部に於て一、被告人高石三郞事高三用は肩書自宅で昭和二十三年十二月八日頃行政官廳の許可を受けず濁酒七升を製造所持し、二、被告人松田八郞事崔鳳相は肩書自宅で右同日頃行政官廳の許可を受けずして濁酒一石二升と麹四升位を製造所持して居た旨の被告人両名に対する罪となるべき事実を夫々判示して居り該判示自体に徴し明らかなるように被告人両名に対する右の各罪となるべき事実は夫々其の内容を異にし、從て之が法令の適用に於ても亦夫々異なるものがあると認められるので斯の如き場合には、尠くとも各被告人別に之が法令の適用を示すべきことを、法は要求して居るものと解しなければならぬ、蓋し若し然からずとすれば其の法令適用の当否を審査し得ないからである。然るに此の点に関する原判決の措置を観ると原判決は其の理由中の適條の部に於て酒税法第六十條第六十四條刑法第十八條刑事訴訟法第百八十一條第一項と法條のみを示すに過ぎなくて、之のみに依つては果して原判決が被告人両名に対する前記の各罪となるべき事実に対し夫々右法條の全部を適用したものであるか將又其の中孰れの法條をどの被告人の右事実に適用したものであるかを知るに由なく、延いては原裁判所の之が法令適用の当否を到底判断し得ないのであつて、斯の如きは畢竟原判決に其の法令の適用に関し判決に影響を及ぼす誤があるものと断ずるのでなければ理由不備の違法があるものと謂うの外ない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例